陶芸特有の質感、貫入の表情が好きです。
私がよく使用する釉薬のひとつは、貫入がたっぷり入る調合をしています。
貫入とは、釉薬にガラスの成分をたくさん入れて、高温で溶かし、冷める過程で釉と素地の収縮率の差が起きて生まれるひび模様のことです。
窯から出してからも、しばらくは『キン』っとひびが入る高音が聞こえて、今まさに模様が生まれていることを実感できます。
やりすぎると素地と釉薬の差が大きすぎて生地が割れてしまう原因になるのですが、このひびひびな表現がきらきらと輝く宝石のようで、いつまでも眺めていられるくらい美しいのです。
貫入の食器は、このひびに沿って食べ物や飲み物の色素が入り込み、使用を重ねるごとに風合いが変わっていくのも面白いところです。
うつわを育てるという言葉がありますが、ひとそれぞれの生活によって表情を変えていき自分だけの宝物になっていくというのは、陶芸の魅力だと思います。